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社員の幸せを露骨に追求する会社
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090409/191444/

 「成長」にあえて背を向けている企業がある。この会社が重視しているのは
従業員の幸せと企業の永続。そして、それを実現するために持続的な低成長を
続けている。人事制度は終身雇用の年功賃金。地域社会への投資も惜しまな
い。それでいて、10%を超える高い利益率を維持している。

 私たちの足元は経済危機に揺れている。強欲の虜になったグローバル資本主
義はバブルを膨らませ、金融危機を引き起こした。今の経済危機は強欲がもた
らした1つの末路とも言える。であるならば、この会社の生き方は、危機後の
資本主義に、そして企業経営に、1つのヒントを与えるのではないだろうか。
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 48年という長きにわたって増収増益を続けた企業がある。本社は長野県伊那
市と、決して地の利に恵まれているわけではない。しかも、扱っているのは
「寒天」という地味な成熟商品だ。にもかかわらず、1958年の創業以来、階段
を上るように、一段一段、着実に成長してきた。

 この会社の名は伊那食品工業。国内シェアは約80%、世界シェアでも15%を
占める寒天のガリバー企業である。


■社是は「いい会社をつくりましょう」

 2008年12月期の売上高は159億円と、中堅企業の域を出ない。だが、経常利
益率は10%とほかの食品メーカーと比べると高い部類に入る。自己資本比率は
72%。銀行借り入れもほとんどない。小さいけれど、ピリリと強い――。そん
な言葉がぴったりくる企業だ。

 この会社の社是は「いい会社をつくりましょう」。その言葉通り、業績や財
務に優れた「強い企業」ではなく、従業員、取引先、顧客、地域社会など会社
を取り巻くすべての人々にとって「いい会社」であることを目指している。人
事制度は終身雇用の年功賃金。下請けを叩くことはなく、地域社会への継続的
な投資も惜しまない。利益至上主義が幅を利かせるこの時代、企業の多くが
失った何かが今なお残る。

 “前人未踏”の48期連続増収増益を実現した伊那食品工業。その要因を経済
誌的に書けば、以下のようになるだろう。

 寒天という成熟商品の新しい用途を徹底して開発してきたこと。そして、新
しい需要や新しい市場を作り出してきたこと。それが、増収増益の最大の理由
である――と。

 確かに、伊那食品工業は旧態依然とした寒天市場を革新してきた。最初に手
がけたのは原料調達の安定化だった。

■原料調達のために海外を走り回った1970年代

 もともと伊那地方では農家の冬場の副業として寒天作りが盛んに行われてい
た。だが、天候に左右されることが多く、不安定な相場商品として悪名を轟か
せていた。原料の海藻不足が極まった石油ショックの時など、寒天の価格はそ
れまでの3倍に高騰している。

 これだけ変動幅が大きいと食品メーカーも怖くて寒天など使えない。相場商
品でなくすことが寒天需要拡大の唯一の道。そう考えた伊那食品工業は、海外
に解を求めた。その後、チリやモロッコ、大西洋の真ん中のアゾレス諸島、メ
キシコの片田舎、オーストラリアのキングアイランドなど、原料の海草を調達
するために世界を走り回った。

 そして、安定調達の体制が出来上がった1977年、伊那食品工業は新聞に次の
ような広告を出した。「寒天はもう相場商品ではありません」。寒天価格を安
定させるために原料調達の道を切り開いた。それが、寒天のトップ企業になる
礎を築いたことは間違いない。

 次に進めたのは寒天の用途開発である。

 創業当初の伊那食品は技術もカネもない零細企業だった。しかも、寒天の市
場自体も急速に縮小しつつあった。会社の資源はほとんどなく、市場そのもの
が縮んでいく――。考え得る最悪の環境に置かれた伊那食品工業は新しい市場
を作り出すことに活路を見いだした。

 新しい寒天需要を掘り起こすため、寒天を使ったお菓子を作り、メーカーに
提案すると同時に、メーカーの声に耳を傾け、物性や粘度が異なる新しい寒天
を開発してきた。その過程では、棒状や粉末ではない寒天も生み出している。


■「固まらない寒天」など斬新な商品を次々と開発

 例えば、同社の主力商品に「イナゲル」という商品がある。これは、寒天に
ゼラチンなど粘性を持つ別の天然素材をブレンドした粉末や顆粒の寒天製材の
ことだ。寒天と別素材の配合によって、様々な固さを作り出すことができる。
寒天の用途開発を進める中で生まれた商品だった。

 「ウルトラ寒天」という固まりにくい寒天を開発したこともあった。ある研
究の際、全く固まらない寒天ができてしまった。常識的に考えれば失敗作だ
が、一縷の可能性を感じた研究者は量産化技術の研究を続けた。その成果だろ
う。今では、介護食や飲料の原料として広く使われるようになった。

 伊那食品工業では毎年、利益の10%をR&D(研究開発)に振り向けている。
食品メーカーだけでなく、外食産業、医薬品メーカー、化粧品メーカーなどに
顧客が拡大しているのも、寒天を深耕し、可能性を広げてきたからにほかなら
ない。

 1980年には家庭用商品にも進出した。家庭用ブランド「かんてんぱぱ」がそ
れだ。デザートゼリー、海藻サラダ、スープなど寒天を使った商品群である。
商品数は約100種類。売上高の30%を占める商品に成長している。長野県と山
梨県の一部でしか販売されていないため知名度は低いが、直販の顧客も数多く
おり、全国に根強いファンを持つ。

 こうした研究開発や商品開発の結果、特許で60件、商品数で1000種類を超え
る商品を生み出した。品質の改善や安心安全の生産体制も他社に先駆けて作り
上げてきた。寒天市場が縮小する中、伊那食品工業が一貫して業績を伸ばして
きたのはそのため。だからこそ、国内シェア80%、世界シェア15%まで成長し
たのだ。

■社員の幸せを通して社会に貢献すること

 もっとも、こういった解説は会社の全体像を言い表しているとはとても言え
ない。この会社の強さは何か。その本質は会社の哲学、経営者の思想にある。


 この会社の社是は「いい会社をつくりましょう」。そして、この会社の経営
理念は「社員の幸せを通して社会に貢献すること」である。この言葉を見ても
分かるように、伊那食品工業が目指している世界は凡百の企業とは違う。重視
しているのは社員の幸せと会社の永続。それを実現するために、持続的な低成
長をあえて志向している。

 なぜ社員の幸せなのか。なぜ会社の永続なのか――。アカマツに囲まれた伊
那食品工業本社。同社の会長を務める塚越寛氏(71歳)を訪ねると、問わず語
りに話し始めた。

 「会社は何のために存在するのか。皆難しく考えるけど、オレにすれば難し
いことなど何もない。人間すべての営みは人が幸せになるためにある。企業や
組織、あらゆる団体は人間が幸せになるために作ったものじゃないのか」


塚越寛会長は赤字会社を寒天のトップ企業に育て上げた 高校在学中、肺結核
にかかった。人生で最も美しい青春時代を結核の療養生活に費やした。そして
3年後、病気が完治すると、伊那市内の木材関連会社に拾われた。すると、1年
半後、運命の糸に導かれるように、子会社だった寒天製造会社に送り込まれ
た。

 「どんなに儲けている会社があったって、従業員が貧しくて、社会に失業者
が溢れていれば、それには何の意味もない。世界一売る小売りが米国にあるけ
ど、従業員の10%近くが生活保護を受けているという。それで『エブリデイ
ロープライス』。いったい何なのって思わないかい」

 この子会社は、当時としては珍しい粉末寒天を製造していたが、毎年のよう
に赤字を垂れ流しており、銀行管理下で再建を始めたところだった。その赤字
会社の再建役として見込まれたのだ。肩書は社長代行。齢わずか21歳だった。
塚越会長は続ける。

 「会社の目的は売上高や利益を伸ばすことではなく、社員を幸せにしたり、
世の中をよくしたりすること。売上高や利益はそのための手段でしかない。商
品やサービスを通して社会に貢献していくのはもちろん重要だよ。でも、それ
は企業の役割の1つであって、すべてではない。会社はもっと露骨に人の幸せ
を考えなきゃいけない」

 赤字会社の経営を任された。人材はなく、技術もない。カネはもちろんない
けれど、借金だけは山のようにある――。いわばマイナスからのスタートだっ
た。だが、破綻寸前の赤字会社を立て直し、優良企業を育て上げた。今では、
トヨタ自動車をはじめ多くの大企業が視察に訪れる。塚越会長は半世紀、経営
者として時を刻んだ。そして、独自の経営哲学を磨き上げた。

 「そう考えれば、何も悩むことはない。会社はみんなが幸せになるためにあ
る。それでいいじゃないの。経営者はもっと、会社のあるべき姿を考えるべき
じゃないか」

■「企業はもっと露骨に人の幸せを考えるべき」

 「企業はもっと露骨に人の幸せを考えるべき」。そう言い切るだけあって、
伊那食品工業では社員にかなり厚く報いている。雇用の保障はその象徴だろ
う。

 研究者、営業、総務、経理、役員、レストランのシェフ、蕎麦店の店長、直
売所の店員など、伊那食品工業では様々な部門で多くの人が働いている。総勢
約400人。一部の例外を除き、そのほとんどが正社員だ。しかも、終身雇用で
あり、年功賃金である。

 終身雇用と年功序列はバブル崩壊後の十数年で多くの企業が捨て去った。だ
が、この会社では頑なに守り続ける。なぜ“時代遅れ”の人事制度を続けるの
か。塚越会長の思想は明快だ。

 新しい技術や商品を開発したとしても、その人1人が生み出したものではな
い。成果を出す過程では、同僚や取引先など様々な人の力を借りている。会社
の経営資源や歴史が生み出した信用も寄与しているはずだろう。であるなら
ば、成果を1人の従業員やチームに帰することは公平ではない。

 個々のスタープレーヤーが活躍するのは結構なこと。だが、組織が大きな力
を発揮するのはメンバーが一丸となって頑張る時。成果主義を導入すると、こ
の組織の力を削いでしまう。

 そして、従業員の立場でものを考えた場合、最もカネが必要になるのは子供
の教育費や住宅ローンなどの出費がかさむ40〜50代。一番カネが必要な時に給
料が増える。それが社員にとって一番幸せなのではないか――。塚越会長はこ
う考える。

■「何かよくなった」。そう感じることが会社の成長

 考えることは社員の幸せ。このことを象徴するのは人事制度だけではない。
伊那食品工業は毎年、売上高の10%を超える経常利益を出している。この利益
は必ず、何らかの形で社員に還元していく。

 例えば、3年に1度支給している「スタッドレスタイヤ手当」。冬季の寒さが
厳しい伊那地方では、スタッドレスタイヤは必需品である。大半の従業員は通
勤に車を使っており、タイヤ交換代はバカにならない。「ならば」と2万円を
補助することにした。

 象徴的な例をもう1つ。伊那食品工業では、5〜6年前から自宅の車庫の改築
に補助を出している。屋根つきの車庫にすることを条件に7万円を支援するの
だ。その理由は環境対策である。冬の寒さが厳しい伊那地方では、毎朝、エン
ジンが暖まるまでに時間がかかる。この間のアイドリングが二酸化炭素の排出
につながる。屋根つきにしておけば、アイドリングの時間が節約できる。そう
考えたためだ。

 この手の話は枚挙にいとまがない。伊那食品工業では、10時と15時に15分ず
つのお茶休みがある。この時のお菓子を「お茶菓子代」として月500円支給し
ている。さらに、この会社では2年に1度、社員旅行で海外に行く。昨年の海外
旅行で会社が支給した金額は1人当たり23万円。昨年は50周年記念という特殊
事情だったために多額の支給になったが、例年でも8万円を補助している。

 「社員寮の価格も安いし、私生活のサポートが充実している。働いている環
境がとてもいい」。入社3年目の竹内友二氏は言う。同じことを、多くの従業
員が考えているだろう。

 こういった社員還元は金額の多寡ではない。オフィス環境がよくなった。駐
車場が広くなった。食堂がきれいになった――。どんな些細なことでも、「前
よりよくなった」「幸せになった」と従業員が感じられれば、それがモチベー
ション向上につながるのではないか。「売り上げが増えることが成長ではな
い。『何かがよくなった』と従業員が実感できる。それが、会社の成長だとオ
レは思う」。塚越会長もこう語る。

 だからだろう。伊那食品工業の従業員はよく働く。

 伊那食品工業の利益率は高い。寒天で圧倒的なシェアを確保していること、
イナゲルのように価格競争に陥りにくい付加価値の高い製品を作っているこ
と、値引きされるような販路を避けていること――などいくつかの理由が挙げ
られる。だが、突き詰めれば、従業員の生産性に帰結する。

 この会社には「担当」という概念があまりない。「かんてんぱぱガーデン」
に隣接する北丘工場で働く宮井美保子さんは、家庭向け商品「かんてんぱぱ」
の直販の注文を受けるかたわら、北丘工場の横にある「かんてんぱぱショッ
プ」のレジ打ちやガーデンを訪れる団体客の案内など、様々な仕事をこなして
いる。これは本社部門でも変わらない。

 当たり前と言えばその通りだろう。だが、従業員同士がお互いにカバーし合
うため、余計な人員を抱える必要がない。さらに、性善説で経営しているた
め、管理のための書類や人員が少なくて済む。

 営業担当者が使う社用車を1つ取っても、普通の会社であれば、使った後に
キロ数やガソリン残量などを日報に書き残す。だが、伊那食品工業ではその種
の報告を求めない。「だって、社員を信用しているからね」(丸山勝治取締
役)。管理のための作業が少なければ、その分、効率や生産性は高まるだろ
う。

■「性善説の経営」が管理コストを下げる

 性善説の経営。それを機能させるために、塚越会長は社員教育に力を入れ
る。

 取材で訪れた3月27日。ちょうど、新入社員研修が行われていた。

 伊那食品工業の新入社員研修は制度やスキルの前に、人としての生き方や考
え方などを教えていく。この日のテーマは「学び方」。二宮尊徳の遺訓を引き
合いに出し、学ぶことの意味を新入社員に話していた。

翁曰く、
人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。
学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。
知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。
故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。
学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。
道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

 人として生まれてきた以上、学び続けるべき。学校の勉強だけでなく、人の
話を聞いたり、ものを見たり、本を読んだり、仕事をしたり、様々なことで学
ぶことはできる。そして、学んだら道を知るべき。ここで言う道とは、「物事
のあるべき姿」。会社はどうあるべきか。父親はどうあるべきか。母親はどう
あるべきか。社員はどうあるべきか。市民はどうあるべきか――。それを知る
ために、学ぶべきと新入社員に説いた。

 この新入社員研修の初日、塚越会長は必ず、「100年カレンダー」の前に連
れていく。100年の未来が書かれているカレンダーの前に立たせ、“自分の命
日”を入れさせるのだ。時間は誰にでも等しく与えられている。そして、どん
な人間にも死が訪れる。残された時間をどう使うか。その意味を考えさせるた
めだ。

■「通勤時、右折禁止」が意味すること

 「彼らだってあと50回くらいしか花見はできない。それが分かれば、真剣に
桜を見るだろう。限りある時間を理解すれば、1日1日を大切に生きる。時の流
れははかない。そのはかなさを考えてほしい」と塚越会長は言う。こういった
研修は2週間続く。終わる頃には、新入社員はがらっと変わっているという。

 「立派な社会人であれ」。塚越会長は事あるごとに社員に語る。立派な社会
人とは、人に迷惑をかけない人間のこと。会長自身、会社や社員、取引先に迷
惑をかけないように生きてきた。その教えが隅々まで浸透しているからだろう
か。同社の社員は「立派な社会人」を実践している。

 伊那食品工業の社員はスーパーなどに買い物に行った際、遠くから車を止め
る。ほかの客が近くに止めやすいように配慮しているためだ。

 毎朝の通勤時、伊那食品工業の社員は幹線道路を右折しない。必ず数百メー
トルの先を大回りして、左折で敷地に入ってくる。これも、右折で道路渋滞を
招かないためだ。

 伊那食品工業の本社や工場の駐車場を見ると、すべての車が後ろ向きに止め
られている。理由を聞くと、車の排ガスで駐車場の草花を傷めないため、とい
う。

 人によっては「きれいごと」と感じるかもしれない。だが、従業員は無理す
るふうでもなく、自然に実践していた。「右折禁止の話は入社前に聞いてい
た。でも、入社して驚いたが、本当に皆右折しない。この会社では、言ってい
ることは必ず実行している」。先の竹内氏は打ち明ける。

 この会社は、社員だけでなく、取引先の幸せも考えてきた。

■「払うべきものを払い、使うべきものに使う」

 「払うべきものをきちんと払って、使うべきものにしっかりと使う。そうす
れば、最終的に得をするんだよ」。こう語る塚越会長は創業以来、曲げずに続
けてきたことがある。それは、印紙代をケチらないことだ。

 通常の取引では、約束手形の代わりに為替手形を利用することがある。この
場合、手形を受け取った方が印紙代を支払うことになる。今でこそ少なくなっ
たが、印紙代のコストを削減するため、為替手形を振り出す企業は存在してい
る。これは自分が支払うべきコストを取引先に押しつけているのと同じこと
だ。それに対して、伊那食品工業は貧乏だった時代も印紙代は自分が負担して
きた。無理な下請け叩きはせず、長期的な関係を構築してきた。

 そんな小さな積み重ねが信用を生み、ファンを醸成してきたのだろう。

 昨年に開いた50周年の記念イベント。終わってみると、参加した企業から
様々なお返しが来た。寄付や協賛を求める企業が多い中、ご祝儀は一切受け取
らず、逆に取引先に引き出物を出した。その返礼だった。「本当に要らないと
言っているのに、『どうしても』っていろいろ送ってくるんだよ。そうすると
さ、結局は得しちゃうんだよ。世の中はそういうものなんだよ」と塚越会長。
「損して得取れ」を地でいく話である。

 そして、本業で稼ぎ出した利益は地域社会にも積極的に還元していく。

 伊那市の郊外にある伊那食品工業の本社。その敷地に一歩足を踏み入れる
と、まるで公園のような光景が広がっている。アカマツに囲まれた本社棟、ア
カマツの幹の色に合わせた建物は松林の中に溶け込んでいる。2008年5月に完
成したR&Dセンター、立木をできるだけ残すために、あえて斜面に建てられて
いた。

 こうした本社機能に加えて、近隣住民が気軽に使える文化会館、寒天をふん
だんに利用した3カ所のレストラン、水芭蕉や片栗が咲き乱れる山野草園、中
央アルプスの伏流水を汲み上げた無料の水汲み場――。3万坪の敷地には、
様々な施設が点在している。その名も「かんてんぱぱガーデン」。入り口には
門もなければ守衛もいない。誰もが自由に出入りできる。事実、昼時にもなれ
ば、レストランの駐車場は車でいっぱいになる。

■本社の敷地に無料の水汲み場がある会社

 塚越会長が「かんてんぱぱガーデン」を作り始めたのは1987年のことだっ
た。「職場を緑溢れる環境にすれば、社員が幸せに感じるのではないか」「緑
豊かな公園を作れば、美しい街並みにつながるのではないか」。そう考えたた
めだ。

 その後、本社棟、レストラン、水汲み場、文化会館、R&Dセンターと徐々に
施設を増やしてきた。バブル崩壊後、多くの企業が社会貢献活動から撤退して
いったが、伊那食品工業は継続して投資を続けた。現在も、美術館を新設する
ために敷地の一部を造成している。

 「前は伊那市内の文化会館で開いていたけど、ここだと集客力があって、一
般の人が大勢来てくれる。だから、この会場を使うようになりました」。敷地
内の文化会館、「かんてんぱぱホール」で手作りの木目込人形展を主催してい
た女性は笑った。施設利用料は格安。ペイできるレベルではない。だが、それ
でも意に介さない。

 「はっきり言って大赤字。ひどい店は人件費と売上高が同じくらいだよ。か
んてんぱぱショップの物販でカバーして何とかペイさせている」。塚越会長が
こう語るように、一つひとつの施設に損得勘定はない。それを証拠に、レスト
ランは夕方6時までしか営業していない。夜まで営業すれば、飲食の売り上げ
は伸びるが、伊那市内の飲食店の客を奪うことになる。「それはするべきでは
ない」と判断している。

 この森は毎日、従業員が手入れしている。よほどの大雨でも降らない限り、
従業員は7時50分頃に出社し、敷地内の掃除をしている。敷地内のゴミ拾い、
草むしり、落ち葉拾い、雪かき――。会社が強制しているわけでもないのに、
自発的に集まり、ガーデンの管理に精を出している。それは土日も同様だ。

 「儲かっているからできること」。そうした声もあるだろう。だが、伊那食
品工業はカネがない時代から社員や取引先、地域社会を大事にしようと努力し
てきた。その姿勢が信用と評判を生み、競争力を高めてきたことは間違いな
い。社員の幸せを願う気持ちが従業員のやる気を引き出し、取引先や社会を思
う思想がファンを生み出した。この循環が、伊那食品工業の強さの本質であ
る。


■「成長は善ではない」

 「いい会社をつくりましょう」。その理念を実現するため、生産設備の改
善、従業員や取引先への還元、地域社会への貢献などに惜しみなくカネをつぎ
込んできた。毎年10億円、この10年で100億円を超えるカネを投じている。売
上高を考えると、かなりの金額であることが分かるだろう。

 理想の会社を作るためには継続した投資が必要だ。継続した投資を実現する
ためには利益を上げなければならない。そして、リストラせずに利益を上げる
には企業の成長が不可欠だろう。「いい会社」を作るためには企業の成長が不
可欠である。

 だが、その成長は急であってはならない。企業の成長は年輪を重ねるよう
に、地道なものでなければならない。そして、身の丈に合った腹八分の成長で
なければならない。塚越会長はそう考えてきた。

 「どんなに厳しい環境だろうが、年輪ができない年はないでしょう。それは
企業も同じこと。木が年輪を積み重ねるように、緩やかに強くなればいい」

 年輪の幅は若木の時は大きいが、年月を経るごとに狭くなっていく。成長率
は低下するが、木は一回り、大きくなっている。良いときも悪い時も無理をせ
ず、持続的な低成長を志す――。年輪のような企業作りを塚越会長は目指して
きた。

 塚越会長の年輪経営に照らすと、急成長は会社の健全な発展をゆがめる。急
成長の過程では、設備や人員を増やしている。だが、急成長の後には必ず反動
がくるもの。その時初めて、設備や過剰の人員に直面する。

 そして、設備の廃棄や給与カット、人員削減、最悪の場合は廃業に踏み切ら
ざるを得なくなる。これは目先の利益を追った結果である。成長は必ずしも善
ではない。急激な成長は組織や社会、環境に様々なゆがみをもたらす。それ
は、社員を幸せにはしないだろう。

 あえて低成長を貫く――。その姿勢は徹底している。こんなことがあった。

 「かんてんぱぱ」ブランドの中に「カップゼリー80℃」という商品がある。
その名の通り、80℃のお湯で溶いて放置しておくとゼリーができるという商品
だ。1981年に販売を始めたところ、大手スーパーから全国展開の話が舞い込ん
だ。全国販売が実現すれば、売り上げは一気に増える。幹部の誰もが賛成し
た。だが、塚越会長は申し出を断った。


■低成長のためにスーパーの全国展開を拒否

 増産するには設備や人員を増強しなければならないが、販売が低迷した時、
その設備と人を維持するだけの需要を作り出せるのか、疑問が残った。それ
に、急な拡大によって、品質管理が疎かになる可能性は否定できない。販売
チャネルが1つに偏ることで経営のバランスを損なうことも考えられる。

 それよりも、業務用や家庭用など様々な分野の商品を開発し、生産拠点を分
散させ、販売チャネルを多様化していく。その方が、バランスが取れた経営に
つながることは間違いない。「身の丈に合わない」。そう感じた塚越会長はあ
えて売らない道を選んだ。

 そんな塚越会長も2005年に訪れた寒天ブームの時は道を誤った。「寒天は体
にいい」。テレビで紹介されたことをきっかけに、この年は寒天の需要が爆発
的に伸びた。初めのうちは、「ブームの後の反動に苦しむだけ」と静観してい
た。

 だが、店頭から寒天が払底。治療の一貫で寒天を利用していた糖尿病患者や
医療関係者、介護関係者から増産の要望が相次いだ。さらに、質の悪い中国産
が流入し始めており、寒天の信用が傷つくのではないか、という恐れもあっ
た。「増産するべき」。そんな社員の声に押されて、創業以来、初めて昼夜兼
業の増産体制に踏み切った。その結果、売上高は前年比40%増、経常利益に
至っては2倍に増えた。

 もっとも、ブームの反動はやはり大きかった。

■身の丈に合った成長率を考える――それが経営者の役割

 2005年12月期に約200億円だった売上高は2006年12月期には176億円に減少し
た。この瞬間、創業以来続いていた48期連続増収増益が途絶えた。落ち込みは
さらに続いた。2007年12月期には165億円、2008年12月期は159億円と3期連続
の減収を強いられた。

 2004年12月期の売上高が146億円だったことを考えれば、前期の159億円でよ
うやく巡航速度に戻った格好。ブームがなければ、年数%の着実な成長を実現
していただろう。「今振り返っても忸怩たる思い。でも、逆に年輪経営の正し
さがよく分かった」。塚越会長は振り返る。

 経営の目的は社員を幸せにすることにある。売り上げや利益は社員を幸せに
する手段に過ぎない。会社の成長とは、「前よりもよくなった」と社員が感じ
ること。そのために急成長は必要なく、低成長でも永続する方がいい。いわば
腹八分。少し足りないという頃合いが企業の成長としてはちょうどいいのだろ
う。

 「適正な成長は業界によって違う。創業間もないベンチャー企業は若木同
様、成長率が高くて当たり前。ただ、食品業界を考えれば、人口減少と高齢化
によって確実に市場は減少していく。これ以上、胃袋は増えないんだ。その中
で、急成長を目指したらどこかに無理が出るよな、普通は」

 「今話したのは食品業界であって、ほかの業界は状況が違うよ。海外市場を
目指すという選択肢もある。でも、地球が有限であることを考えると、どこか
で限界が来るのではないかな。みんな何となく5%成長、10%成長と言ってい
るけど、自分の企業や業界に合った成長率を考えることが必要。それを考える
のが経営者の役割だと思う」

 終身雇用と年功序列は企業の競争力をそぐ。経済界やメディアはバブル崩壊
後、こう批判してきた。多くの場合はそうだろう。現実に、苛烈なグローバル
競争を生き抜く企業にとって、終身雇用をやめ、成果主義を導入し、固定費を
削減することは必要なプロセスだったに違いない。

 だが、伊那食品工業の発想は全く違った。

 雇用の不安をなくせば、従業員は集中して仕事に励み、生産性向上につなが
る、と考える。取引先と正しい商売を続ければ、信用が高まり、結果として得
をする、と捉える。地域社会に貢献すれば、会社のブランド価値が磨かれる、
と見る。48期増収増益。同社の考え方が間違っていなかったという証左だろ
う。

「非上場だから可能なこと」。そう批判するのはたやすい。実際、伊那食品工
業が上場していたら、今のような経営は不可能だろう。だが、「会社は従業員
を幸せにするために存在する」という伊那食品工業の基本原理は1つの真実。
それぞれの立場で会社の意味を考えることが重要なのではないか。

 革新のエネルギーは人間の欲望である。飽くなき欲望があったからこそ、資
本主義は発展し栄華を誇った。だが、時に欲望はバブルを生み、人々の生活に
計り知れない衝撃を与える。人の欲望に箍(たが)をはめることは難しい。倫
理を説いたところで、倫理で欲望を制御できる人間はそう多くはない。

 だが、どこかで欲望を制御しない限り、誰もが幸せに生活できる経済社会は
維持できないだろう。持続する資本主義をどう構築するか。そして、継続して
富を創出する会社をどう作るか――。「いい会社をつくりましょう」。伊那食
品工業の経営に未来を見たい。

坂本 光司
¥ 1,470
コメント:伊那食品が取り上げられています。

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